一九八〇年。時代はバブルに向かって突き進み始めたところだった。編集部の奥にあるコーディネイト・ルームという小さな部屋は、毎月撮影前になると、編集部員の集めてきた服で一杯になった。シャネル、エルメス、ヴァレンティノ、フェラガモ……。華やかで、ゴージャスなパリやミラノの服たち。いや、それらは服というよりももっと、女そのもののように見えた。美しくわがままな、砂糖菓子の女。自分とはまったく違うそんな女性像を雑誌の中で作り上げながら、どこかでその価値観に影響を受け始めていた。雑誌の読者やスポンサーに会う時のために、私はそれまで着たことのなかったスーツを買った。キュッと締まったウエスト。丸い腰。膝丈のタイトスカート。ナチュラルストッキングに七センチヒールのパンプス。パーマをかけ、長い髪に巻きを入れることも覚えた。タイトスカートに、濃い赤の口紅を引き、カツカツとヒールを鳴らして歩くのは小気味よい気分だった。
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