ブランドに関する私の考え方を、もうひとつあげたい。今の日本に蔓延する、ブランド品を持たざる者は人にあらず、とでもいわんばかりの、おかしな空気がもたらしたものは、輸入ディスカウント店や質店で売られるブランド品だったり、果てはブランド品の偽物だったり。ブランドそのものの出自や、本来、持っている美点とは、あまりにもかけ離れた現実だ。いったい、なんのためにブランド品を持つのか?モノグラムが入ったバッグをこれ見よがしに持っていたからといって、そのブランドにふさわしい人間になったことにはならない。今まで私が見聞きした店と客との大人の関係をいくつかど紹介する。・三〇代後半の友人の話彼がある老舗ブランドを気に入り、幾度となく通ううち、ショップスタッフと世間話をするようになり、最近では○○さんと名前で呼ばれるようになった。ようやく店に客として認めてもらえた、と笑いながら話していたこと。・あるショップの店長に聞いた上客の話店長、曰く。「なにも来るたびに買わなくてもいいのです。二回に一回くらいで十分。仕事の合間にふらりと来て私と話したりするだけでもね。そんなお客様は買い方もスマートで、こだわりが少ないのです。一言でいって鷹揚です。反対に、大人げないお客様は品物のディテールや納期にやたらと口うるさく、なにかというと責任を追及するようなものいいをしますね」。・幼いころから銀座を遊び場にしていた人生の大先輩の話「店からものを買ってやるという態度は自分を狭めてしまう。舶来のいい品が手に入ったから、店にそれを見せてもらいに行って、とても気に入ったから、ひとつ分けてもらう。そんな態度が結局、自分を素敵な大人にするのです」こうした人々の話からわかるのは、ブランド品は購入すれば完結するのではないということ。むしろ、ブランド品を購入するということは、これから店との長い付き合いがスタートする、ということである。その証拠に、銀座にある一流メンズブランドの店長は、自分の客が過去に購入した服をすべて把握していて、「以前、お求めになったベージュのジャケットに、このシャツはとってもよくお似合いになりますよ」というふうなすすめ方をしている。残念ながら、私はとてもその店で買い物ができる立場にないので、いまだ彼に自分のクロゼットを把握してもらうにいたっていないが、年をとって、もし経済的に少し余裕ができたら、そんな関係を築いてみたいとかねがね思っている。
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