自分が二十代の前半、何故ああもやみくもに結婚したかったのか、少し分かってきた。私は曖昧な関係がこわかったのだ。最初の本格的な恋愛でカーッと盛り上がった時「私の恋愛の邪魔は、たとえそれが親であっても許さない」と傲慢にも思ったわけだが、それは両親の子供であった自分から脱した瞬間だった。まあ、親はいつまでも親で、私が彼らの子供であることは一生変わらない事実ではあるのだけれど、そうして親離れしたあと、私は誰ともつながっていないただ一人ぼっちの人間になった。もちろん友達はいたけれど、友人関係というのはある程度距離をおいた関係を指す。「私達、一生友達でいようね」なんて釘をさすようなことを言う人は、もうすでに友達ではないように思う。友人関係というのは、もっと自然で自由度の高いものだと私は思う。友達論はまたあとにするとして、ここでは恋人の話である。今まで一番親しかった人(親)の手を振り払った瞬間、私はものすごい不安に襲われたのだ。親離れしたって、突然大人になれるわけではない。まだ心は幼稚なままで、誰か親身になって助けてくれる人がほしくてたまらなくなった。あんなに口うるさかった両親は、私が就職したとたんに何も言わなくなった。帰宅時間はもちろんのこと、外泊も旅行も許可でなく報告で行けるようになった。これはたぶん親側の「子離れ」なのだろう。そうして本当に自由になったら、情けないことにものすごく心細くなってしまったのだ。うっかり浮き輪なしで海に泳ぎ出してしまったようで、不安で不安でたまらなかった。だから私はすぐにでも、結婚したかったのだろうと思う。人間誰しも明日はどうなるか分からない。今日は相思相愛でも、明日彼は私でない違う人を好きになるかもしれないし、私だっていつ心変わりをするか分からない。心変わりどころか、人間いつどんな事故や病気で死ぬか分からないのだ。